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群馬県高崎市を流れる烏川の佐野橋 [橋梁]

先日(2015年10月4日)、読売新聞栃木版の「わが街空から」水辺編の記事が目に留まりました。群馬県高崎市に有る「佐野橋」について書かれていたからです。
佐野橋1.jpg
(佐野橋右岸下流側から撮影。奥に上越・信越新幹線の高架橋)
紙面の上半分のスペースに、「佐野橋」全体を上空から撮影した写真が掲載され、下半分に「佐野橋」にまつわる興味深い記事が載っています。
以前、橋に関する本を読んでいる中で「佐野の舟橋」と言うものが書かれていました、栃木の人間としては「佐野」と言うと、お隣の「佐野市」の事と決めつけてしまいますが、この「佐野の舟橋」は万葉集の東歌に収録されている、≪上毛野 佐野の舟橋取り放し 親は離くれど 吾は離るがへ≫と詠われている様に、群馬県に有ったものと今回改めて知る事が出来ました。
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(佐野橋左岸橋詰付近より撮影。背後に上毛の山並みが霞んでいます。)
かなり以前に読んだ本でしたが、改めて引っ張り出して読み直しました。岩波新書「橋と日本人」(上田 篤著)です。その中の「うきはし」の部分、挿絵に葛飾北斎・諸国名橋奇覧「かうつけ佐野ふなはしの古づ」の浮世絵が使われています。
川の両岸に杭を打ち、綱を渡して50余隻の小舟を並べて繋ぎ、上に板を置いて人馬がその上を渡って行く様子が描かれています。舟橋は中央部が川の流れで押される様を誇張してか、「く」の字に曲げて描かれています。ここにも「かうつけ」(群馬県)と記されています。
≪世阿弥はこの歌を元に「舟橋」と言う能をつくった。≫と有ります。「橋と日本人」より抜粋させて頂きます。
≪ある旅僧が上州佐野にやってくると、フナバシをかけて橋供養をしている若い男女にあう。かれらは、親が橋板を外したために川底に沈んでうかばれないまま「邪淫の鬼」となった男女の亡霊である。とうじ、人が川で死んだときは、舟に鳥をのせて鳥が鳴いたところの川底に死骸がある、といいつたえられていた。しかし、その死骸もみつけられないままに成仏できない二人なのだ。そこでつぎのような歌が詠まれる。
東路の 佐野の舟橋鳥は無し 鐘こそ響け夕暮れの空
ここで、「取り放し」が「鳥は無し」によみかえられている。その一句をいわば掛詞として、フナバシも非情さがうたいあげられたこれは古作の能である。≫
又、上毛新聞社発行の「群馬の川」の中に、「烏川にまつわる伝説」としてやはりこの「佐野の舟橋」が掲載されています。
≪烏川にかかるこの舟橋を隔てて両側に長者がいた。佐野村の長者は「朝日の長者」といい、また一方の長者は「夕日の長者」といった。朝日の長者には一人の息男があり、夕日の長者には一人の息女があったが、両方とも一人息、一人娘であった。≫ストーリーはこの美男美女の二人が、舟橋の上で出逢い、互いに慕い合う仲となって行きます。しかし二人の親達はもともと仲が良くなかったので、二人の仲を裂くために、この舟橋を切って落としてしまった。逢う事が出来なくなった二人は、毎日川の両岸に立って苦しみ、ついに二人は烏川に身を投げてしまうと言う悲恋物語です。この「佐野の舟橋」については類似した話も伝えれれているという事です。
烏川1.jpg
(佐野橋の橋上より烏川下流方向を撮影。長閑な川の風景が広がります。)
現在の「佐野橋」は当然舟橋では無く、鋼鉄製の橋脚が並んでいます。欄干と橋床は木製ですが、橋桁は鋼製と木製の部分が混ざっている様です。全長121メートル、幅2.15メートルとなっていますが、橋詰はコンクリートのガードが造られ更に幅が絞られています。人や自転車は通行可ですが、軽自動車以上は不可となっています。今日も犬を連れた散歩の人や、学校帰りの生徒が自転車で渡っています。
佐野橋4.jpg
(佐野橋東詰より撮影。幅員1.4mの標識が立つ)
群馬県高崎市を流れる「烏川(からすがわ)」に架けられた「佐野橋」は右岸の佐野窪町と左岸の上佐野町を繋いでいる生活道路のようです。
今回私は右岸の佐野窪町側から現地に入りましたが、田畑や河川敷が広がり思うように目標に向かうことが出来ませんでした。田圃の中の道路脇に車を置いて、歩き回り幸い散歩をしていた方に教えて頂き「佐野橋」にたどり着くことが出来ました。「佐野橋」の直ぐ上流側には「上信電鉄線」の「烏川橋梁」が架かっています。
佐野橋2.jpg
(佐野橋の上流、上信電鉄の鉄橋の上をカラフルな電車が走っていました。)
烏川の左岸には立派なマンションも建てられています。高崎駅も近い為付近にはアパートも多く建てれれています。一方右岸は河川敷や田畑が広がる長閑な田園風景が残っています。もうすぐ西の山脈に夕陽が沈もうとしています。急いで家路につきました。
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