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栃木市鍋山の石灰工場を見学しました [自然の恵み]

昨年開催された栃木市の市民大学講座のひとつ、「石灰を通して見る栃木」というテーマで、栃木の地場産業の一つと成っている、栃木市北西部寺尾地区に有る石灰産業発生の歴史に付いて、講師のお話を聴講しました。そして本日は実際に石灰を採掘し多くの製品に加工して販売している、石灰工場を訪問して話を聞くと言う、現地学習に参加して来ました。
始めに工場長さんから「石灰とはどの様な物質なのか」、実際に目の前で実験をして、生石灰に水を加えると激しく反応して発熱・膨張する。加える水に或る物質を混合させてやることで、反応を遅らせ、反応を持続させられるなど、反応をコントロールすることが出来る。そしてこのような性質を利用した商品が、私達の身の回りの色々な分野で、活用されている。との説明が有りました。
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(生石灰の性質を説明する為の、簡易実験を見せてくれる)
これまで石灰と言うと、古くは漆喰壁用として、その後肥料・農薬、それからセメントの原料(お隣佐野市の旧葛生町を通る時、セメント会社の名前を大きく記したプラントを眼にして、理解してました。)程度の認識しか持っていませんでした。
又、今回の説明の中で、「上部石灰」とか「ドロマイト」などの名前が出て、理解が今一つ出来ていません。どうやら鍋山周辺の山は、断面すると表面の土の下に、「上部石灰の層」「下部石灰の層」「ドロマイトの層」などが地層を成しているのだそうです。石灰石とドロマイト石を比較すると、外観的にも色合いが異なり、石灰石が白く、ドロマイト石は少し暗緑色をしている。これらの石に一滴の希塩酸をかけてみると、石灰石は直ぐに反応して泡が発生した。一方ドロマイト石は泡がチョボチョボとしか発生しない。こう実験してその違いを説明してくれた。
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(右白い方が石灰石、左暗緑色の方がドロマイト石)
石灰石(炭酸カルシウム)の成分は、54%〜55%が酸化カルシウム・残り炭酸ガス44%。
ドロマイト石は、酸化カルシウム35%・酸化マグネシウム約18%・炭酸ガス46%と、炭酸ガスが2%ほど多い。
「石灰石」に熱を加える(900℃以上)と、中に含まれている炭酸ガスが空気中に出て、残るのは酸化物(酸化カルシウム)となる。これが「生石灰」 反応性が非常に高い性質を持つ。その為生石灰に水をかけてしまうと、爆発的な反応を起こして飛び散ると言います。
「消石灰」はこの「生石灰」を水和消化し、製灰・粒度調性をして製造されたもの。
これまであまり縁の無い物質の名前で、理解が困難でしたが、それらの物質が「大気汚染対策」や「鳥インフルエンザの消毒」「酸性雨対策」などにも、活躍している事を知る事が出来ました。

説明は1時間以上に及びましたが、鍋山石灰の歴史、時代背景で一時は消費が低迷した厳しい時期を乗り越えて来た事。製造の工程など興味深い話に、引き込まれ時間を忘れさせるほどでした。

説明の後はヘルメットを付けて、製造現場の見学へ。
グランドキャニオンの様に、採掘で切り立った石灰岩の山肌が前面に広がります。私が若かった頃、尻内から葛生町へ峠越えで行くと、峠を越えた先の前方の岩肌の露出した山の中腹にいくつも大きな穴が見えました。この穴は昭和50年以前、良い成分の鉱床部分だけ採掘する、「トンネル掘り」の跡。その方法では増加した需要に生産が間に合わなくなって来た為、昭和50年以降は露天掘りとして、ベンチカット(階段掘り)法に変え、大量に採掘が出来る様になったという事で、前面には正に階段状に掘り進められた採掘現場が広がり、大型の重機が岩を砕く様子を見る事が出来ました。
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(ヘルメットを付けて説明を受ける)
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(採掘現場、手前の水溜りは採掘跡に雨水や地下水などが溜まったもの)
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(階段状に採掘がおこなわれている)
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(採掘場で石灰岩を砕く重機)
直径50センチメートル大の石を山から採掘して、それをジョークラッシャー(粉砕機)に入れて、100ミリメートル以下の粒度に変え、篩分けを行う。次に、1100℃〜1200℃の工業炉にて6時間程焼成し、炭酸ガスがほぼ全量取り除く。その為の工場建屋が県道の両側に立ち並んでいる、運搬するベルトコンベアーが縦横に走る。
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(山際に立ち並ぶ石灰石を破砕焼成を行う工場建屋群)
寺尾地区の三峰山(鍋山)の西麓から南、佐野市旧葛生町喜多山にかけて多くの石灰工場が日々大量の石灰石を採掘しています。
栃木の市街地から望める鍋山は変わらぬ姿を見せていますが、その裏側では大規模な採掘が進んでいる事も、今回改めて認識する事が出来ました。遠い将来はこの風景も変わって行くのかも知れません。
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(県道202号仙波鍋山線の鍋山から仙波に抜ける山道から見える採掘場)

※今回の工場見学をさせて頂いた会社は、鍋山の石灰工場で一番早く、嘉永4年(1851)創業した「田源石灰工業株式会社」さんです。詳しく説明して下さり大変勉強になりました。そして石灰石の有効性に改めて感心を致しました。
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