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栃木城址に建つ石碑について [石碑]

栃木市城内町一丁目、市立栃木第四小学校東側の住宅街の中に、小丘と小さなL字形の堀の有る公園が整備されています。
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(栃木城址公園。栃木城の名残りとして、小丘の北西側に土塁と堀が残っています)

栃木市役所のホームページに依ると、「栃木城址公園」に付いて≪市立栃木第四小学校の東側に残る館城の跡:天正19年(1591)皆川広照が築き、18年後の慶長14年(1609)広照が徳川家康の怒りに触れ、取り壊されました。現在あるのは、東丸の北西部の土塁と堀の一部が残り、堀ぎわには昔の名残を留める武家屋敷の白壁の塀がおよそ30軒残っています。≫と紹介しています。
坂本邸1.jpg
(栃木城址の北西脇に見える、武家屋敷の名残りを残す建物)
栃木城址説明板.jpg
(公園内には栃木城址の説明板が建てられています)

公園の広さは3,600.6㎡。主な施設として噴水・池・記念碑・トイレ・水飲み・四阿・ベンチ・遊具(すべり台、砂場、ラダー)が整備されています。
栃木城址1.jpg
(城址の小丘上に一基の大きな石碑が建っています。写真右手奥。)

それでは石碑の元へ。栃木城址に建つ石碑、恐らく「栃木城」の由緒に付いて記されているものと予想していましたが、その考えは外れておりました。
石碑の上部に刻された篆額の文字は、私には全く読む事が出来ません。
揮毫部分1.jpg
(石碑上部に刻されている、解読困難な四文字の篆書体の漢字)
とりあえず写真に収めて、調べる事で何とか解読出来ました。右から左へ「陰徳陽光」と書かれている様です。その意味を解く為「四字熟語」に有るか調べてみると、「陰徳陽報」と言う一字違いの言葉が見つかりました。この言葉は、中国前漢武帝の時代に編纂された「淮南子(えなんじ)」の巻十八、人間訓で≪誰にも知られないように善い行いをすると、必ずよい報いがあるということ。≫と出ていました。恐らく石碑の「陰徳陽光」も同様の意味が込められている様に思われます。

次に碑文を読んで行こうと思いますが、これまた難解な漢文体です。背の高い石碑ですので、一行に64文字、13行(最後の行は58文字)という事で、ビッシリと826個の漢字が刻されています。
碑文部分1.jpg
(826個の漢字が整然と刻された碑文の一部)

とても読み下す事が出来ませんが、碑文の文字を部分的に読んで繋げていくと、おおよその内容が理解出来て来ました。
先ず碑文一行目に「坂本金一郎」や「明治二十二年四月町村制施行翌月選挙栃木町助役」の文字。碑文中ほどに「君重任助役七回補佐町長三世在職實二十三年終始一貫忠実奮勵」、そして碑文後半に「翁家譜又見其履歴先祖素手于藤原氏中世永禄元亀頃爲皆川山城守之家臣主家滅亡前賜其城址是城内之所存名」などと刻されています。これらの文言よりこの石碑は、明治22年4月の町村制施行から、初代の栃木町助役と成り、その後23年間の在職中「根岸政徳」「大塚惣十郎」「櫻井源四郎」の三代の町長に仕えた、坂本金一郎氏の顕彰碑で有る事がわかりました。

その碑文の後に四言十六句が古詩の形で添えられています。その詩の部分を抽出します。
  主将奏功 侍良参謀 主人興家 有内助籌 三代町長 助役忠實 終始一貫 奏功輔弼
  今也発展 市制新施 斯月斯日 將建頌碑 内外祝福 大擧盛式 神靈有感 亦應無極

下野新聞社が昭和47年に発行した「郷土の人々 栃木・小山・真岡の巻」に、この坂本金一郎氏に関する記事が載っています。
≪太っ腹の坂本助役≫として、≪初代の助役は明治22年の町村制施行から44年までつとめた坂本金一郎氏である。坂本は城内町の大地主で、初代戸長高田俊貞のもとで副戸長をつとめていた。仕事に精通し少しぐらいの事にはびくともしない、ふとっ腹の助役であり、根岸政徳・大塚惣十郎・櫻井源四郎・望月磯平と四代の町長につかえてきた。明治42年には自治功労者として知事表彰を受けています。≫と紹介されていました。補佐をした町長が、三代と四代と解釈の仕方で差が現れたものと思われますが、どちらにしても栃木町の創成期に、首長を補佐して多くの事業を推し進めてこられた方です。

碑文全文を必死に書き写しました。文字が小さくなって読み難いと思いますが、興味の有る方は是非現地にて直接石碑を確認下されば幸いです。
栃木城址に建つ石碑の碑文.jpg
(書き写した碑文全文)

石碑の建立年月は碑文最後の日付けとすれば、「昭和十二年四月」と刻されています。
碑文の撰ならびに書は、「従四位勲四等七十七翁安達常正」と刻されています。
安達常正と云う人物は、教育者で明治39年(1906)5月22日に栃木県師範学校長として栃木県に赴任されて来ました。その後、大正10年(1921)9月に奈良県女子師範学校長と成っています。


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